はじめまして。
ファイナンシャルプランナーの波多野誠一と申します。
大手損害保険会社に15年勤めた後、独立して個人向けの資産相談を受けています。
2級FP技能士の資格を持っていますが、それ以上に「自分でもやっている」ことが、この仕事の説得力だと思っています。
40代半ばで早期退職したとき、退職金の預け先をどうするか、本気で悩みました。
銀行の定期預金では利息がほぼゼロ。
かといって株式に全額突っ込む度胸もない。
そんな中でたどり着いたのが「実物資産」、とりわけ金(ゴールド)への投資でした。
最初は半信半疑でしたが、3年経った今、あのとき一歩踏み出してよかったと感じています。
この記事では、私自身の経験も交えながら、なぜ今40代を中心に実物資産が見直されているのか、その背景と具体的な始め方をお伝えします。
「投資はよくわからないけど、何かしなきゃとは思っている」という方にこそ読んでいただきたい内容です。
目次
「お金の価値が減っている」という違和感の正体
ここ数年、スーパーで買い物をするたびに「高くなったな」と感じませんか。
気のせいではありません。
総務省統計局の消費者物価指数(CPI)を見ると、2020年を基準(100)とした場合、2024年には108.7、2025年には112.2まで上昇しています。
つまり、5年間で物価がおよそ12%上がった計算です。
一方、銀行の普通預金金利はようやく引き上げが始まったとはいえ、まだ物価上昇を補えるほどではありません。
日銀は2025年12月に政策金利を0.75%まで引き上げましたが、インフレ率が2〜3%台で推移している以上、預金金利との差はまだ大きい。
100万円を銀行に預けていても、実質的な購買力は毎年じわじわ減っている。
これが「なんとなくお金が足りない」という感覚の正体です。
さらに為替も無視できません。
2024年夏には1ドル=161円台をつけ、1986年以来の円安水準を記録しました。
円の価値が下がれば、輸入品の価格は上がり、私たちの生活コストに直結します。
40代は住宅ローンや教育費の負担が重なる時期です。
老後2,000万円問題も頭をよぎる。
私のところにも「このまま預貯金だけで大丈夫でしょうか」という相談が、ここ2〜3年で明らかに増えました。
不安を感じること自体は悪いことではありません。
むしろ、その違和感に気づいた時点で、すでに一歩先にいると思っています。
実物資産とは何か
「実物資産」という言葉を耳にする機会が増えたと感じている方も多いのではないでしょうか。
実物資産とは、株や債券のような「紙の資産(金融資産)」と異なり、モノそのものに価値がある資産を指します。
代表的なものを挙げてみます。
- 金(ゴールド)
- プラチナ、銀などの貴金属
- 不動産(土地・建物)
- アンティークコイン
- 高級腕時計やアート作品
金融資産との一番の違いは、発行体の信用リスクに左右されにくい点です。
株式は企業が倒産すれば紙切れになりますし、債券も発行元が破綻すれば元本が返ってこないリスクがあります。
一方、金は誰かの負債ではありません。
それ自体に希少性と実用性がある。
数千年にわたって価値を保ってきた実績は、他の資産には真似できないものです。
不動産も実物資産の代表格ですが、金との大きな違いは「管理の手間」です。
不動産は入居者対応や修繕など、持っているだけでは済まない面がある。
その点、金は保管さえしっかりすれば手間はほとんどかかりません。
私は不動産投資もやっていますが、「放っておける資産」としての金の気楽さは別格だと感じています。
ではなぜ「今」改めて実物資産が注目されているのか。
理由はシンプルです。
- インフレが定着し、現金の実質価値が目減りし続けている
- 世界的な地政学リスク(ウクライナ情勢、中東紛争など)が収まらない
- 各国の中央銀行が金を大量に買い増している
特に3つ目は見逃せません。
2024年には世界の中央銀行が合計1,000トン超の金を購入しました。
これは過去10年平均の約2倍にあたる数字です。
中国人民銀行やポーランド国立銀行をはじめ、米ドルへの依存度を下げたい国々が積極的に金を買い増しています。
国家レベルで「金を持っておこう」という判断が広がっている事実は、個人投資家にとっても示唆的です。
金が「資産の保険」と呼ばれる理由
実物資産の中でも、個人が最も取り組みやすいのが金です。
不動産のように数千万円の元手は要りませんし、アンティークコインのような真贋の目利きも不要です。
金投資の世界では、よく「資産の保険」という表現が使われます。
私も最初は大げさだなと思いましたが、数字を見ると納得せざるを得ません。
田中貴金属工業の年次金価格推移データによると、円建ての金価格(税抜参考小売価格・年間平均)はこの5年で大きく動きました。
| 年 | 平均価格(円/g) |
|---|---|
| 2020年 | 約6,122円 |
| 2021年 | 約6,402円 |
| 2022年 | 約7,649円 |
| 2023年 | 約8,834円 |
| 2024年 | 約11,718円 |
| 2025年 | 約17,302円 |
2020年の平均6,122円から2025年の17,302円へ、およそ2.8倍です。
同じ期間に株式市場も好調でしたが、金のこの上昇率は際立っています。
背景にはインフレヘッジとしての需要に加え、円安の進行があります。
金はドル建てで取引されるため、円安が進むと円建て価格がさらに押し上げられる構造になっています。
逆に言えば、今後急激に円高に振れた場合、円建ての金価格は下落する可能性があります。
ドル建てでは上がっていても円建てでは横ばい、というシナリオも十分あり得る。
この為替リスクは頭に入れておく必要があります。
一般社団法人 日本金地金流通協会のサイトでも金の基礎知識や相場情報が公開されていますが、金が「有事に強い」のは歴史が証明しています。
リーマンショック時も、コロナショック時も、株式が急落する局面で金は価値を維持するか、むしろ上昇しました。
もちろん、金も短期的には価格が下がることがあります。
2013年には年間で28%下落した年もありました。
万能な投資先ではない。
ただ、長期で見たときに「資産全体の振れ幅を抑える役割」を果たしてくれる。
株が下がるときに金が踏ん張ってくれれば、トータルのダメージは小さくなる。
だから「保険」と呼ばれるのです。
私が保険会社にいたからこそ、この比喩には妙に納得するものがあります。
火災保険は家が燃えなければ「無駄金」に見えますが、いざというときに助けてくれる。
金の役割もそれに近いのだと思います。
40代が金投資を始めるなら押さえたい基本
金投資の主な方法
金投資にはいくつかの方法があります。
それぞれ特徴が異なるので、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
| 方法 | 最低投資額の目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 金地金(現物) | 数十万円〜 | 実物を手元に置ける安心感 | まとまった資金が必要、保管の手間 |
| 金ETF | 数千円〜 | 少額で始められる、NISA対応 | 信託報酬が毎年かかる、実物は持てない |
| 純金積立 | 月数千円〜 | ドルコスト平均法でリスク分散 | 手数料がかかる、すぐに換金しにくい |
| 金先物 | 証拠金次第 | レバレッジで大きな利益の可能性 | 元本以上の損失リスクあり |
40代で初めて金投資を検討するなら、私は金ETFか純金積立をおすすめしています。
理由は単純で、まとまった資金を一度に突っ込む必要がないからです。
金先物はリターンが大きい反面、追証(追加の証拠金請求)が発生するリスクがあり、投資経験の浅い方にはハードルが高い。
金地金の現物購入も魅力的ですが、100gで130万円以上(2025年時点)となると、教育費やローンとの兼ね合いで手が出しにくいのが現実です。
積立投資という選択肢
住宅ローンや教育費を抱えながら資産防衛を考える40代にとって、「毎月少しずつ」が現実的な選択肢になります。
純金積立の良さは、金価格が高いときには少なく、安いときには多く買えるドルコスト平均法の効果が自然に働くことです。
タイミングを読む必要がない。
これは投資に慣れていない人にとって、かなり大きなメリットです。
金の積立サービスを提供する企業はいくつかありますが、たとえば独自の積立システム「ゴールド積立くん」を展開している株式会社ゴールドリンクの企業情報ページでは、契約時に購入金額を確定させる仕組みを採用しており、日々の価格変動に振り回されない設計になっています。
積立の期間やペースは、自分のライフプランに合わせて調整できるものが理想です。
「月々いくらなら無理なく続けられるか」を、家計全体の中で冷静に見積もることが大切です。
私自身、最初は月1万円からスタートしました。
正直、その金額で何か変わるのかと思いましたが、3年続けてみると積み上がりは実感できます。
「始めること」のハードルを下げるには、小さく始めるのが一番です。
実物資産を組み入れるときの注意点
ここまで金投資の良い面を中心にお伝えしてきましたが、実物資産はメリットばかりではありません。
私自身も失敗した経験があります。
始めて半年ほどで金価格が一時的に下がったとき、焦って積立を止めようかと迷ったことがある。
結局続けて正解でしたが、価格の上下に一喜一憂しやすい人には精神的な負荷がかかります。
始める前に知っておくべきリスクを正直に並べておきます。
- 元本保証ではない(金価格は上下する。購入時より値下がりする可能性は常にある)
- 流動性が低い(現物の金は売却に手間がかかる。急な資金需要には向かない)
- 保管コストがかかる場合がある(金地金は自宅保管のリスクか貸金庫の費用が発生する)
- 利息や配当は出ない(金は持っているだけでは収益を生まない)
また、金投資には税金面での注意も必要です。
金地金の売却益は「譲渡所得」として課税対象になります。
保有期間が5年を超えれば長期譲渡所得として税負担が軽くなりますが、短期売買を繰り返すと想定以上の税金がかかることもある。
購入時の証明書や領収書は必ず保管しておくことをおすすめします。
大事なのは、実物資産を資産の「全部」にしないことです。
金融庁の資産形成に関するページでも、長期・積立・分散の三原則が繰り返し強調されています。
金はあくまでポートフォリオの一部として組み入れるもの。
一般的には資産全体の5〜15%程度を金に配分するのが無理のない水準と言われています。
私自身は、資産の約10%を金(積立と現物の併用)に振り分けています。
残りは預貯金、投資信託、不動産でバランスを取っている形です。
この配分が正解かどうかは人それぞれです。
家族構成、収入、リスク許容度は一人ひとり違いますから、「この割合がベスト」と断言するつもりはありません。
ただ、「一つのカゴに卵を盛るな」という格言は、40代の資産防衛にこそ当てはまると実感しています。
娘の大学進学費用と自分の老後資金を同時に見据える年代だからこそ、一つの資産クラスに偏るリスクは避けたい。
金はその分散先の有力な候補として、検討する価値があると思います。
まとめ
40代は収入がピークに近づく一方で、支出も多い時期です。
だからこそ「守りの資産」を意識する価値がある。
この記事の要点を整理します。
- インフレと円安が進む中、預貯金だけでは資産の実質価値が目減りし続ける
- 実物資産(特に金)は、金融資産とは異なるリスク特性を持つ分散先になる
- 金価格は過去5年で約2.8倍に上昇。中央銀行の購入増加や地政学リスクが背景にある
- 金投資は金ETFや純金積立なら少額から始められる
- ただし元本保証はなく、資産全体の5〜15%程度を目安に組み入れるのが現実的
金投資は万能薬ではないし、短期で大きく値下がりする年もあります。
ただ、「預貯金だけでいいのか」という問いに対して、具体的な選択肢を一つ増やしてくれるのは確かです。
私がFPとして相談を受ける中で感じるのは、40代の多くが「何かしたいけど、何をすればいいかわからない」という状態にいることです。
その「何か」の候補として、金を含む実物資産は十分検討に値します。
まずは月数千円の積立から始めてみる。
それだけでも、資産防衛の第一歩としては十分です。