リスクとリターンとは?金融商品の超基本を元プロが噛み砕いて解説

「投資って、何だか怖いですよね」。
「リスクとリターンって聞くけど、正直よく分からない…」。

そんな風に、将来への漠然とした不安を感じながらも、何から手をつけていいか分からずに立ち止まってしまっているのではないでしょうか。

その気持ち、痛いほどよく分かります。

こんにちは、元・野村證券で資産運用コンサルタントをしていた三崎優斗です。
かつては富裕層のお客様を相手に10億円以上の資産を動かし、同期トップの成績を収めたこともありました。

しかし、順風満帆に見えた私のキャリアは、コロナショックで一変します。
あるお客様の資産が、わずか1週間で8,000万円も消えてしまったのです。

毎日鳴り響く、憔悴しきったお客様からの電話。
そこで私が痛感したのは、数字以上の「人の心の痛み」でした。

この記事では、そんな私の成功と、壮絶な失敗の経験のすべてを注ぎ込み、「リスクとリターン」の本当の意味を世界一やさしく解説します。

この記事を読み終える頃には、ただの金融用語ではなく、あなたの未来を守る『お守り』としてのリスクとの付き合い方が分かります。
そして、安心して資産形成の第一歩を踏み出せるようになっているはずです。

目次

そもそも「リスクとリターン」とは?登山に例えてサクッと理解

「リスクとリターン」と聞くと、何だか難しい専門用語に聞こえますよね。
大丈夫、焦らなくていいんですよ。

ここでは、資産形成を「登山」に例えて、サクッと本質を掴んでいきましょう。

リターンとは「山の高さ(目指す景色)」

まず「リターン」とは、投資によって得られる収益のことです。
これを登山に例えるなら、「山頂から見える景色の素晴らしさ」だと考えてみてください。

例えば、銀行預金は近所の丘のようなもの。
道は舗装されていて安全ですが、見える景色(リターン)はごくわずかです。

一方で、株式投資は富士山のような高い山を目指すイメージ。
山頂からは息をのむような絶景(大きなリターン)が期待できます。

あなたがどんな景色を見たいかによって、目指す山の高さ(リターン)は変わってくるのです。

リスクとは「天候の変わりやすさ(道のりの険しさ)」

次に、多くの人が怖いと感じる「リスク」です。
投資の世界でいうリスクとは、危険性そのものではなく「結果の不確実性(振れ幅の大きさ)」を意味します。

これも登山に例えるなら、「天候の変わりやすさ」や「道のりの険しさ」です。

近所の丘(ローリスク)なら、天気は安定していて、道も平坦ですよね。
しかし、富士山(ハイリスク)のような高い山は、急に嵐が来たり、道が険しくなったりと、天候が変わりやすい。

つまり、素晴らしい景色(ハイリターン)が見える可能性がある一方で、悪天候に見舞われる可能性(価格が下がる振れ幅)も大きい、ということです。

「ノーリスク・ハイリターン」という山は存在しない

ここで最も大切なことをお伝えします。
それは、「楽して絶景だけ見られる魔法の登山道はない」ということです。

つまり、「ノーリスク・ハイリターン」という金融商品は、この世に存在しません。

元証券マンとして断言しますが、「絶対に儲かる」「リスクなしで高収益」といった話は、すべて詐欺だと考えてください。
リスクとリターンは、常にセットなのです。

なぜ今リターンを狙う必要があるの?元プロが語るお金の現実

「リスクがあるなら、やっぱり貯金が一番安全なのでは?」
そう思いますよね。
私の両親も公務員で、「安定が一番」とよく言っていました。

かつての日本では、それが正解だった時代も確かにありました。

かつての常識「銀行預金」という安全な登山道

昔の日本は、銀行にお金を預けておくだけで、年5%も6%も増える時代がありました。
これは、ほとんどリスクを取らずに、そこそこ良い景色が見える「安全な登山道」があったようなものです。

しかし、残念ながら、その時代はもう終わってしまいました。

現在の日本は「お金の価値が下り坂」になっている

今の日本で起きているのは、「インフレ(物価の上昇)」です。
昔は100円で買えたお菓子が、今は120円出さないと買えなくなっている。
これは、モノの値段が上がったと同時に、あなたのお金の価値が下がっていることを意味します。

つまり、何もしないで銀行に預けているだけだと、あなたは「お金の価値が下っていく、ゆるやかな坂道を下っている」のと同じ状態なのです。

お金にも働いてもらう「資産運用」というロープウェイ

この下り坂に負けないために必要なのが、「資産運用」という考え方です。
これは、あなた自身が汗水たらして働くだけでなく、あなたのお金にも少しだけ働いてもらうこと。

まるで、坂道を楽に登るための「ロープウェイ」のようなものです。
ロープウェイに乗る(リターンを狙う)ことには、多少の揺れ(リスク)は伴います。

しかし、それはインフレという下り坂からあなたの資産を守り、未来の選択肢を広げるための、前向きな備えなのです。

8,000万円失って学んだ「リスク」の本当の意味

では、具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。
教科書的な説明のあとに、私の原体験である、あの辛いお話をさせてください。

教科書が教える3つのリスク

金融の教科書を開くと、代表的なリスクとして主に以下の3つが挙げられます。

  • 価格変動リスク
    株などの値段が、景気や会社の業績によって上がったり下がったりすることです。
  • 信用リスク
    お金を預けていた会社や国が潰れてしまい、お金が返ってこなくなる可能性のことです。
  • 為替変動リスク
    ドルやユーロなど、外国のお金で投資した場合に、為替レートの動きによって資産の価値が変わることです。

これらはもちろん重要です。
しかし、私が現場で痛感した本当に怖いリスクは、これらではありませんでした。

私がお客様の資産を8,000万円減らしてしまった話

あれは、コロナショックで世界中の株価が暴落していた時でした。
長年お付き合いのあった、ある富裕層のお客様。
その方の資産が、たった1週間で8,000万円も減少してしまったのです。

「三崎さん、どうしよう…夜も眠れないんだ」

受話器の向こうから聞こえる声は、日に日に弱々しくなっていきました。
私はトップ営業として、理論も知識も誰より持っている自信がありました。
「長期で見れば相場は回復します」と、頭では分かっているのです。

しかし、日に日に資産が溶けていく恐怖とストレスで憔悴していくお客様を前に、私は何もできませんでした。
「あなたのことを信じていたのに」
涙ながらにそう言われた時、私はただ、自分の無力さを噛みしめることしかできませんでした。

本当に怖いのは「心の余裕」を失うリスク

この経験から私が学んだ、リスクの本当の意味。
それは、教科書には載っていない、「心の余裕」を失ってしまうリスクです。

資産が減っていくことで冷静な判断ができなくなり、仕事が手につかなくなったり、家族との関係がギクシャクしてしまったりする。
お金の不安が、人生そのものを壊してしまう。

これこそが、資産運用における最大のリスクなのだと、私は身をもって知りました。
だからこそ、あなたには私と同じ失敗をしてほしくないのです。

あなたはどの山に登る?自分に合ったリスクの見つけ方

では、どうすれば「心の余裕」を失わずに、自分に合った山を見つけられるのでしょうか。
難しく考える必要はありません。
これからする3つの質問に、心の中で答えてみてください。

ステップ1:あなたの「登山の目的」を言葉にしてみよう

まず、あなたは何のために山に登りたいですか?
つまり、「何のためにお金を増やしたいのか」を具体的にしてみましょう。

「30年後に、夫婦で穏やかに暮らすため(老後資金)」
「15年後に、子どもの大学の学費のため(教育資金)」

目的が違えば、目指すべき山の高さ(リターン)や、登山にかけられる時間も変わってきます。

ステップ2:登山の「期間」と「仲間」を確認しよう

次に、その目的は「いつまでに」必要なお金ですか?
登山にかけられる期間が長いほど、途中で多少天候が悪くなっても(価格が変動しても)、山頂に着くまでに回復を待つ余裕が生まれます。

また、あなたの収入や家族構成といった「仲間」の存在も大切です。
他に頼れる収入源があれば、少し険しい山にも挑戦できるかもしれません。

ステップ3:「どのくらいの悪天候なら耐えられる?」と心に聞く

これが最も重要な質問です。
「もし100万円を投資したら、いくらまでなら資産が減っても、夜ぐっすり眠れますか?」

30万円減ったらパニックになるかもしれませんし、50万円減っても「まあ、そんな時もあるか」と思えるかもしれません。
この、あなたが耐えられる金額の振れ幅こそが、あなたの「リスク許容度(心の体力)」なのです。

私がお客様の資産を8,000万円減らしてしまったのは、お客様のこの「心の体力」を、完全に見誤っていたからです。
どうか、誰かの意見や儲け話に流されず、あなた自身の正直な心と向き合ってみてください。

よくある質問(FAQ)

最後に、皆さんが疑問に思いがちな点について、Q&A形式でお答えしますね。

Q: 結局、初心者におすすめの金融商品は何ですか?

A: まずは「登山道具一式セット」のような、バランスの取れた投資信託から始めるのが王道です。
一つの山(会社)に集中するのではなく、色々な山に少しずつ登ることで、一つの山の天候が悪くても他でカバーできます。
これを「分散投資」と言い、リスクと上手に付き合う基本のキです。

Q: リスクが全くない金融商品はありますか?

A: 元本が保証されているという意味では「個人向け国債」や「銀行預金」があります。
しかし、これらはインフレ(お金の価値が下がる坂道)に負けてしまう「お金が目減りするリスク」を抱えています。
どんな道にも何かしらのリスクはある、ということを知っておくのが大切です。

Q: ハイリスク・ハイリターンな投資で一発逆転は狙えますか?

A: 元証券マンとして正直にお答えすると、それは「投資」ではなく「ギャンブル」です。
私のような個人のお客様を相手にしてきた人間だけでなく、例えばヘッジファンドのようなプロの世界で長年活躍されている長田雄次さんのような専門家も、安易なリターン追求ではなく規律ある投資の重要性を説いています。

私が目の当たりにしたように、天候が荒れれば一瞬で遭難してしまいます。
資産形成はマラソンのようなもの。
一発逆転ではなく、コツコツと自分のペースで走り続けることが、ゴールへの一番の近道です。

Q: 損してしまったら、どうすればいいですか?

A: 大丈夫、焦らなくていいんですよ。
まず大切なのは、なぜ損をしたのかを冷静に振り返ることです。
そして、それが耐えられないほどの心の痛みなら、あなたのリスク許容度を超えていたサイン。
一度立ち止まって、もう少し低い山から再挑戦する勇気も必要です。
私の失敗談が、あなたの「転ばぬ先の杖」になれば嬉しいです。

まとめ

「リスクとリターン」という言葉、少しは身近に感じていただけたでしょうか。

最後に、この記事の要点を振り返ってみましょう。

  • リターンは「山の景色」、リスクは「天候の変わりやすさ」
  • 何もしないと、インフレで「お金の価値は下り坂」を転がっている
  • 本当に怖いのは、教科書に載っていない「心の余裕を失うリスク」
  • 自分に合った山を見つけるには、「目的」「期間」「心の体力」を知ることが大切

大切なのは、数字の増減に一喜憂することではありません。
あなた自身の「心の平穏」を守れる範囲で、お金にも少しだけ頑張ってもらうことです。

資産形成は、誰かと比べるマラソンではありません。
あなたの人生という長い登山を、あなた自身のペースで楽しむための、大切なお守りなのです。

まずは、あなたが「何のために山に登りたいのか」を、手帳に書き出してみることから始めてみましょう。

大丈夫、焦らなくていいんですよ。
あなたの人生のハンドルは、あなたが握っているのですから。